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人生には物語とROCKが必要だ。

『天狼 Sirius the Jaeger』第7話の感想と演出について

2クールでやれ。

いやもう、このひと言に尽きる展開でした。なんか完全に「第1部・完」みたいな空気になってるんですけど、ひょっとしてこのアニメ、本来は2クール作品として企画していたんでしょうか。個人的には是非ともそのくらいのスケールで楽しみたい作品です。とはいえ、大仰なエフェクトやCGに頼ることもなく、愚直なまでに手書きの人体アクションで魅せていくスタイルをこれだけの密度で貫くのは、やっぱり今の時代では1クールが精一杯なのかもしれませんね。十年くらい前ならまだ可能だったのかな。

まあ、それはいいとして兎にも角にもこの第7話、東京編のラストにふさわしく、前半は派手なアクション作画に振り切ったシリーズ内屈指のハイライトとなっています。前回の窮地から一転、柿崎少将の無念を晴らすために直江邸へと陸軍を派兵させた伊庭少佐。人狼族の滅亡を招いてしまった自身の過去を清算するために狩人となったウィラード。一族の怨敵を前に復讐心に体を支配されるユーリィ。それぞれの因縁がカーシュナーという一点に集束する焦熱の中ボス戦を盛り上げるため、砲火、硝煙、血飛沫も増し増しです。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

なかでも華麗な剣技を見せるカーシュナーのオーバーアクションは、敵ながら小気味よい動きとリズムで観ていてとても気持ちいいです。見た目の派手さだけでも充分刺激的な戦闘描写なんですが、最後のユーリィの一突きのシーンにはなんだかとても示唆的なものを感じました。折られた自身のサーベルによって反撃を食らうカーシュナーの姿は、まるで因果応報な彼の運命を暗示し、勢い余って腕ごとカーシュナーを貫くユーリィの姿は、復讐心に飲まれる彼の憎悪の激しさを物語っているようです。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

また、このときのユーリィは折ったサーベルを左手に持ち替えているんですけど、これは普通に考えれば、カーシュナーの攻撃をかわして体をひねった際の遠心力を最大限に活用するためだと思われます。(ちなみにユーリィの利き腕はCパートの回想を観ても分かるように、右です)  ただ、ここでひとつ「右手は攻撃の手、左手は防御の手」という一般的な象徴論を使ってその意図を深読みすると、左手がカーシュナーの体を穿ち血に染まる様子は、彼の理性が完全に獣の復讐心に染められてしまっている物悲しさを強調しているようにも見えるんですよ。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

そう考えると、獣の血に染まってなおウィラードを傷つけることが出来なかったユーリィの左手というのも、より感傷的にドラマを引き立たせる効果を発揮してくるような気がします。視覚面での楽しさが優先されるアクション作画に振り切ったパートのなかにも、こういった叙情的な画作りをしっかりと仕込んでいそうなところに表現者としての矜持を感じます。

 

何はともあれ、こうして極東まで追い続けたカーシュナーとの決着もつき、物語はいよいよシリウスの匣の謎へと迫るわけですが、後半はそれを巡る各勢力の動向を見せることに終始しているため、クールダウンで大人しめな絵面が続きます。とはいえ、色々と重要な情報も盛り込まれており、7話は視覚的関心で視聴者を惹きつける前半パートに対し、今後の展開の布石と作中のミステリー要素で視聴者を引き込む後半パートという、偏った作画リソースを割り振りながらも、全体的に濃密な視聴感覚を体験させる手堅いシナリオ構成だったと思います。

そこでこの後半パートにおいて、個人的に注目したいのがヴァンパイアの衰退の理由について。どうやらヴァンパイア族はエフグラフが「死の暗晦」と呼ぶ死病に冒されているようです。しかし、ここで引っかかるのがカーシュナーがウィラードに対して「10年という歳月は人間にとっては長かろう」と語っていた点です。無いと思っていたヴァンパイアの不死設定、あるいは長寿設定は今作にも存在するようですね。

それほどの生存能力を有するヴァンパイアが感染病で滅亡の危機に瀕しているというのもおかしな気がしますが、1話の冒頭でカーシュナーが引き合いに出していたダーウィニズムの考え方に沿って想像するなら、ヴァンパイアがこれまで生存できたのは長寿性と単なる偶然によってであり、人狼族とは違って多種族との混血を避けてきたヴァンパイア族というのは、人狼や人間に比べて種族内の遺伝的多様性が著しく低く、環境変化に対する適応力をあまり持たないのかもしれません。そんななか、彼らには耐性がない極めて致死率の高い病原菌が現れ、その感染によって滅亡寸前まで追い込まれてしまっている……ということなのでしょうか。

一族を救済しようとエフグラフが病の根絶を目指し、そのために「叡智の結晶がつまっている」とされるシリウスの匣を欲しているのなら、匣の中身には病に対するワクチンの製法でも記されてるんでしょうか……?(笑)

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

 

 

では最後に今回気に入ったアクションシーンについて。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

ミハイルとの対決シーンで、三節棍の特性を生かす攻防一体の棍術を披露するユーリィ。これまでのユーリィは接合状態での棒術(対アガサ)か、基本形である振り回しの打ち込み(対鞍岳)で攻めていましたが、今回は素早くて隙のないミハイルの短剣二刀の連撃に対応するため、両端の棒で攻撃を受けつつ、間合いをとるために振り回しに切り替えるという柔軟さを見せています。(とはいえ、守りが主体の消極的な闘い方であり、兄貴にもそれを指摘されます)

それぞれの戦闘シーンでアクションが見栄えするように、多彩な用途が可能である武器特性を生かして、個々に戦闘スタイルも変えているようですね。やはりロマン武器は観ていて飽きません。アニメの主人公はもっと鎖鎌とか蛇腹剣とか振り回すべきです。(厨二脳)

 

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

銃弾をサーベルで捌きながら跳梁してウィラードに迫るカーシュナー。間合いを詰めると同時に拳銃を叩いて弾道を逸らし、間髪入れずに銃を弾いて除ける。彼の強さが伝わってくる華麗な剣捌き。うーん、なんともロマンに満ちた曲芸アクションです。

カーシュナーの殺陣が結構好きなので退場はホントに惜しいですね。あと、個人的にこういった嫌らしい愉悦キャラが愛おしくてたまらないタチなので。(笑)  彼にはもっと今回みたいに狩人たちの関係性を踏みにじる、ネチネチとした愉悦芸を披露して欲しかったです。(暗黒微笑)

 

そういえば、ユーリィは獣化が進むと白髪が増えるようです。白のメッシュは人狼の血を表現していたんですね。では、普段の彼のキャラデザというのは、まるで母親譲りの青みがかった黒髪=母の血が彼のなかの野性を押し留めているようなイメージなんでしょうか。

ふうむ、やはりユーリィの獣化は絶対に避けなければいけませんね。だって、こんなのあまりにも悲しすぎるよ……

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

ブサイクなんだもん。

 

 

第七話『讐敵の炎、哭白の刻』

脚本:小柳啓伍

絵コンテ:岡村天斎

演出:菅沼芙実彦

作画監督:鍋田香代子、鈴木理沙

総作画監督松浦麻衣、佐古宗一郎