UglySmile

人生には物語とROCKが必要だ。

『天狼 Sirius the Jaeger』第2話の感想と演出について

ユーリィと咲のあいだに実りつつあった絆が無惨にも引き裂かれ、二人の心に深い傷を与えた今回のエピソード。観ているこちらのメンタルもゴッソリと削られてしまいそうなヘビーな展開でしたが、そのように感じるのも、二人の痛みにどっぷりと感情移入させるだけの丁寧な画面作りが、今回も意地悪なくらい徹底されていたからです。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

咲の愛らしい仕草や健気な振る舞い。ユーリィの柔らかい表情や世話好きな一面。Aパートでは二人のあいだに流れる穏やかな時間をひたすら切り取っていきます。ともに母親を亡くした寂しさを抱える二人が寄り添う姿は、吸血鬼を殺し続けるユーリィの狂気をはらんだ日常とはかけ離れた暖かくいじらしい光景で、前回のような人を寄せ付けない雰囲気とはまた違った彼の片影を強く印象付けました。

また、このふれあいはアガサ襲撃時の緊迫感を強める効果も発揮していて、咲に対してすっかり庇護欲を刺激されてしまった視聴者を本気でハラハラとさせ、さらにその直後に訪れる悲劇の重苦しさを際立たせます。ユーリィによって倒された華田博士が、母親の想いだけでなくユーリィと咲の絆も象徴するかのようなトマトの苗に向かってくずおれるさまは、まるで哀しみを共有した絆が断ち切られ、代わりに父親の死によって結ばれる二人の因縁を強調しているかのようでした。この暗転具合が実に嫌らしいです。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

 

ところで、このアニメが第2話にしてこんなにキツい話になるとは正直僕は思っていませんでした。(まあ、イカれた父親の手でキメラにされるよりはマシかもしれないけど……)  ただ、物語の早い段階にここまで踏み込んできてくれたことで、作品のシリアスレベルが把握できたのはありがたいし、今後あり得そうなシビアな展開に備える用意もできる親切な構成だったのかなと思っています。でも、咲ちゃんの闇堕ちだけはやめてくれ。マジ頼む……。

あと余談ですが自分、基本的に主人公が精神面で痛め付けられる物語が大好きという性癖の持ち主なので、そういった点でも満足な第2話でした。やはり壮大なカタルシスには壮大な悲劇が必要です。本作でOPテーマを担当してる岸田教団&THE明星ロケッツが過去にタイアップした『天鏡のアルデラミン』なんかも、なかなかの主人公のハートフルボッコアニメっぷりで割と好きだったんですよね。スッキリした覚えはあんまりないけど。

 

そうそう、2話でもう一つ印象的だったのがシナリオのまとまりです。咲の言葉によって軟化するユーリィとフィリップの仲や、ユーリィたちが生きる殺伐とした非日常に踏み入ってしまう涼子、といった「関係性の変化」。何やら思想的に繋がっていそうな百虎党と吸血鬼の目的や、V海運と競合する「アルマ商会」なる組織の不穏な動き、ユーリィとフィリップのあいだにある"血の因縁"に、ユーリィを狙撃したミハイルの正体、といった「情報の上乗せ」。これだけの要素が「華田一家との関わりによってユーリィの心が傷つく」という展開を基軸にしたプロットに組み込まれてる構成力の高さには驚かされます。

登場人物も多く勢力図も複雑になりそうなアニメですが、今のところ決して物語の流れや観てる側の理解を阻害することなく、キャラクター心理や情報が自然なかたちで積み上げられている手堅い構成だと思います。深手を負ったユーリィの流れ着いた先が、偶然にも吸血鬼勢が狙う人工心臓の研究者である華田博士の邸宅だったというご都合展開に目を瞑ることができるくらいには。また、物語の引きの強さも本作の大きな魅力のようですね。

 

 

では、最後に気に入ったアクションシーン。

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

アガサの眷属になった華田博士。その体が立ち上がる様子を目で追う咲。咲の表情とは裏腹にその希望が打ち砕かれる物悲しいシーンです。このシーンが凄いのは咲の感情、フィリップのリアクション、華田博士の復活という三つの状況を一度に説明している複合的な視点です。これによって危機的局面が同時進行する忙しない状況の緊迫感が増してくるような気がします。

また、あえて咲の顔に寄った窮屈な構図によって、咲の目の前で起きてる(視聴者には見えない)不気味な状況や、それについてのフィリップの反応を受け手に想像させて心理的恐怖を煽っています。ホラー演出ですね。

さらに言えば、吸血鬼モノのセオリーを理解してる視聴者と、そんな知識なんて持っていないからこそ純粋に喜んでいる咲。この認識の齟齬が、観ているこちら側の緊張感をさらに刺激してくるような気もします。咲ちゃん逃げてー。

 

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

華田ヴァンパイアに襲われるフィリップと咲が気になるユーリィ。そのナメた態度にブチギレるアガサ。吸血鬼はほんとプライドが高いのね。ユーリィが何度も咲たちを確認する様子は視聴者と感情を上手く共有しています。一貫してユーリィはあちらの状況を第一義に捉えながらアガサをやり過ごします。ナメプです。上部画像の左下のシーンではフレームの外からアガサの罵声が入ります。あえてアガサをフレームインさせないことで彼女の疎外感や苛立ちを伝えてるような気がします。

前段の咲のシーンとともに「あえて見せない」という手法が、作画コスト的にも演出的にも功を奏した好例ではないかと。

 

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© Project SIRIUS /「天狼 Sirius the Jaeger」製作委員会

降ってきた刃を飛び回し蹴りで弾いて華田ヴァンパイアを仕留めるシーン。ただただカッコいいです。というか、もっと"ありがち"な殺陣を選択することも出来たと思うんですよ。でも、ここでこういった派手でケレン味のある意外な流れを持ってくることで、ユーリィのギリギリの切迫感が伝わってくるような気がします。

 

 

第二話『妄執する黄色い華』

脚本:小柳啓伍

絵コンテ:安藤真裕

演出:太田知章

作画監督鈴木理沙、宮下雄次

総作画監督:佐古宗一郎