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『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』3話 感想と考察:移動する国の身勝手さについて

第3話『迷惑な国』の感想と考察です。

今回も『迷惑な国  – Leave Only Footsteps! –』の単独構成でした。

 

 

まずは考察から

 

……と思ったんですけど今回はとくに不可解な場面も無く、分かりやすい話だったのではないでしょうか。

何かに困り果てた様子のキノ。そこに突然現れた超科学を擁する移動国家。珍しく長期の滞在を申し出たキノでしたが、それは高額な通行料をふっかけて旅人を困らせる「通せんぼの国」を、この国を利用して越えるためだった、というオチですね。

以下、個人的に気になった点を挙げてみます。

  

  • 移動する国の身勝手さ

 

今回、キノが滞在することになった「移動する国」。この国の人々の、文字通り踏みにじられる他国に対する無関心、自国本位な身勝手さは一体どこからくるんでしょう。

優越者の傲慢と一言で片付けるのは簡単ですが、もしかすると彼らの恵まれた環境そのものがそれを生んでしまっているのかもしれません。

科学技術や保障制度が過剰に発達した安全で便利すぎる暮らしは、結果的に人間同士の相互扶助の機会を減少させ、かえって他者への同情心や共感意識を衰えさせてしまうかもしれません。

また社会とのつながり意識の希薄化は内向きな自己弁護を増長させてしまい、他者への仮借ない攻撃性にもつながりやすくなってしまうのではないでしょうか。

つまりここでいう「他者」「社会」を「外の国々」に置き換えたのが彼らの暮らしぶりなのではないかと思うんですよ。

さらに言うと彼らの国には日の概念はありますが、年の概念はありません。ひとところに留まることなく旅を続けているからです。

年の概念とは古来より季節の周期性に由来し土着意識に深く根を下ろすものです。ひょっとするとそれらを持ち得ないことが彼らの、踏み荒らされた外の世界への関心や責任を希薄にさせている側面もあるかもしれません。彼らにとって外の世界はいつだって巡ってくるものではなく、通り過ぎるものでしかありませんから。

 

  • なんかどっちも悪いみたいな雰囲気で締められたんだけど……

 

どう考えても移動する国の方がクソッタレです。騙されないでください。家潰されるより通行料ぼったくられる方がよっぽどマシです。

ただ初見時は「なんだ通せんぼの国もクソじゃん」と思って妙にホッとしてしまったんですよ。それがなんだかスッキリしないので、この保身意識の原因は一体何なのかと考えていたところ、思い当たったワードが内集団びいきというやつです。

自分が所属している集団に対しては好意的だが、それ以外の集団に対しては不遜で差別的な態度を取ってしまう社会心理のことですが、これが国に肩入れするキノの視点を通して観てるこちら側に働きかけ、公務員さんの自己弁護に妙に納得し、通せんぼの国を過度に悪者にしたくなる心理へとつながったのだと思います。

でもどちらに住みたいかと問われたら断然「移動する国」ですけどね。安全で便利すぎる暮らしマジ最高。

 

  • その他、思い至ったこと

 

移動する国ってあれですよね。完全に原発意識してますよね。形といいシステムといい移動してるときの怪獣映画っぽいBGMといい。それに原発に限らず現実の発電所も環境意識を示すためによく壁画が施されますよね。

そう考えるとキノの「あの国は、これからどこへ行くんだろうな」の台詞もなかなか感慨深いものに思えます。

あとネルフ本部司令室みたいな指揮所もそうですけど、機巧都市はやっぱりロマンです。

 

通せんぼの国の心の叫びであるサブタイトルの英題は旅人の間に伝わる格言、"Take only memories, leave only footprints."(思い出だけを持ち帰り、足跡だけを残しなさい)が元ネタでしょうか。(ちなみにこの言葉、世界中の観光地で景観保護の注意書きとして使用されているそうです。カッケー。)

FootstepsもFootprintsも同じく足跡の意味です。なぜFootstepsの方をタイトルに用いたかまでは分かりません。

 

 

  • 感想

 

オーバーテクノロジーのイカれた国が出てきてレーザーまでぶっ放す破茶滅茶ぶりは完全にギャグですが、それだけにとてもアニメ映えするエピソードでした。しかしギャグ回だというのにこの妙にスッキリしない視聴後感。これもまたこの作品の特徴の一つですね。

ただそんな事よりキノの照れ顔が可愛かった。