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『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』2話 感想と考察:国を崩壊させたキノの真意

第2話『コロシアム』の感想と考察です。

今回は『コロシアム  – Avengers –』の単独構成でした。

 

 

まずは考察から。

  

  • キノが不殺を貫いたのは「優しさ」なのか

 

キノは対戦相手に向かって繰り返し降参するよう訴えますが、それは温情によるものだったのでしょうか。

僕はそうは思わなくて、キノはただこの国の空気に従いたくなかったのだと考えます。

なぜなら論旨も論拠もハッキリしない先日の悪文記事でも語ったように、キノはエリートフリーターだからです。定職に就きもしないでフラフラすることに誇りを持って生きていますから、社畜のノリに付き合う気なんてさらさらありません。

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闘いを眺める市民たちが望むのは参加者の死と、殺しです。誰かの生々しい死によって覚えることのできる自らの生の実感を、安全な場所から享受しようとする空気がこの闘技場を支配しています。キノや他の参加者たちはその実感を搾取される側の立場にあります。

それぞれの国の風土や慣習に一定の距離を保って接することを信条としているキノですから、自分の意志が強制される不本意なイベント参加には怒りをおぼえるのでしょう。のっけからイライラしちゃってます。なので意地でも観衆を喜ばせないよう、「支配への反抗」の意を込めてキノは不殺を貫いたのではないでしょうか。

キノが殺人に対して躊躇も忌避感も抱いていないのは、この後の王殺しを見ても明らかです。

 

  • 市民同士で殺し合いさせるのはさすがにやりすぎじゃね?

 

キノは王を派手にぶっ殺してやりました。果たしてそこに込めた真意とは何だったのでしょう。

僕は本作を観る限り、キノが王に対し強い感情を持っていたとは思えません。それよりもその死を踏み台にして市民同士で殺し合いをさせ、国を崩壊させる事こそがキノの目的だったと考えています。ではなぜそんな事をしたのか。

かつて出会った夫婦への同情心からくる復讐、というのは確かにキノのなかの人間らしさや揺らぎを覗かせて物語を切なくも美しく彩ります。なんせ物語のタイトルの英題はAvengers(復讐者たちの意。ただしここで言う復讐とは個人的な怨念返しよりも、正義の名のもとに下す制裁の意味合いの方が強い)です。

全くその気がないとは言い切れませんが、それでもやっぱり僕には復讐代行が一番の理由だとは思えないんですよね。あ、言っときますけど間違っても感情失った殺戮マシーン主人公を気取らせたいわけではないですよ?

僕は復讐よりは前述した「支配への反抗」の究極の形として、国そのものをキノは破壊したかったのではと考えてるんですよ。なぜなら王政とはいえこの国のありようを形づくっている責任は王だけにあるのではなく、その行いを嬉々として看過している市民たちの側にもあるからです。

つまり、キノがこの不本意なイベント参加を了承した一番の理由は、国の気風そのものへの腹いせだったと思っています。結果的にそれによって何人死のうがお構いなしです。腹いせで人を死なすのだって充分人間らしいです。

 

追記:先日、ニコ生の一挙放送を観ていたら、新ルールの宣言のシーンで「勝負をしろとは言ったが殺しあえとは言ってない」というコメントを目にして、ハッとしました。確かにその通りです。

それは、国のありようが変化するキッカケを与えようとしたキノの「正義」だったのかもしれませんね。それで、観ていて気付いたんですけど、闘技場の構造が前作はコロッセオのようなものだったのに対し、今作は現代のスタジアムのようなものとして設定されてるんですよ。

それはひょっとすると、心の隅で「おまえら、その闘争心をもっと別の形で発散させろよ」と市民たちを諌める、キノの「揺らぎ」を示唆していたのかもしれません。

 

  • キノをハメた婦人の真意は?

 

ここで英題が効いてくると思います。

婦人がキノの実力を理解していたかどうかは確証ありませんが、こうなる事を見越してキノを陥れたのだと僕は思っています。Avengersとはシズと婦人のことだったのではないでしょうか。その信念のなかに正義があったとはあまり思えませんが。

いやひょっとすると回りくどいミスリードや皮肉のつもりで冠したタイトルかもしれません。(さすがに考えすぎか)

シリアスな場面だというのに石にあたるキノはちょっと可愛いくて困ります。一見すると婦人の不幸を想ってまだあの国への怒りが燻ってるように思えますが、僕にはこの時のキノの憤りが、支配に反抗し続けていたように見えて、結局は婦人の思惑に支配されていただけの自分に対するもののようにも見えました。

 

  • 大きすぎる王冠

 

キノが王冠をシズの頭に重ねるシーンを観て思ったのですが、シズにとってキノの「王殺し」は、閉塞した復讐心に支配されていた自身の心が救われただけでなく、退嬰した状況から自身を解放させ、より啓発的に生きようとするための通過儀礼としても作用したのかもしれません。

遠近で重なる大きすぎる王冠は、王としての責任の重さを表現しているように見えますが、支配者として国に留まることでシズが人間として小さくまとまってしまうことを意味してるようにも見えました。今後キノと似た道を歩んでいくことを暗示しているようにも見えますね。

 

 

  • 感想

 

さすがに今回の話、旧作との比較で語ろうとしてしまうのはどうしたって避けられないと思います。

先に結論だけ言わせてもらえば、個人的には全然ありです。いやぁスタッフまじGJ。

 

旧作では二話にわたる中編として展開されましたが、人気のエピソードとはいえ、主要キャラの登場回であるために構成に加えざるを得なかった、という事情を考えればシェイプアップは仕方のないことです。

しかし今作では要点を捉えた秀逸な取捨選択によって、キノの内面がむしろ旧作に比べ明瞭になったのではないかと思うんですよ。

とくに王を、狂気と苦悩を抱えたひとりのキャラクターとしてではなく、「王」というただの記号として配置させたことで王殺しにおける感傷が排除されたことは、王をめぐる周囲の憎悪に対するキノのドライさを感じさせます。

また旧作では描かれなかったキノが新ルールを宣言するときの支配的な全能感やその後の市民の乱闘の描写では、国に対するキノの積極的な悪意が強調されているように感じました。

バトルアニメとしての醍醐味は確かに小振りですが、それでも充分満足のいくリメイクでした。

 

OP絵が解禁されました。素晴らしいです。

キャラクターに内面世界が次々と映写される様子には、『キノ』の内省的で思弁的な作風が投影されているような気がしました。

全体的に光沢感のある塗りと印象的な光の撮影効果がとても綺麗で、やなぎなぎの繊細で開放的な歌唱と合わさるとこれまたグッとくるんですよ。